自閉症児とのコミュニケーションづくりヘ : M君へのかかわりから
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概要
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人は人とのかかわりなくしては生きられない。自閉症の顕著な症状であるコミュニケーションのぎこちなさが教育において重視される所以もそこにある。筆者は,相互障害状況の克服という観点から半年間に亘って自閉的傾向を持つM君ヘアプローチした。学校及び寄宿舎生活における「集団の中でのM君へのかかわり」を通して,M君の衝動的な叫びにコミュニケーションの道具となりうる可能性を感じ,働きかけが適当であればコミュニケーションの糸口を引き出せるのではないかと考えた。しかし,可能性を感じながらも現時点の筆者自身の受信能力で叫びに限定してM君とのやりとりの端緒を掴むのは困難だった。そこで,叫び以外の表出行動へも視野を拡げ"M君通い"を重ねる過程で,偶発的に「逆模倣」から「循環模倣的なコミュニケーション遊び」という形でM君とやりとり的な行動を時々交わせるようになった。次に筆者との「個別の時間」を後半5回設定した。ここでは,M君の発達段階,特に自己意識に視点をおいて考察することにしたが,鏡や写真に映る自分の像の反応から,M君の中で自己と外界が徐々に統合へ向かいつつあるという感触を得た。今回の試みから,伝達意図の希薄な表出行動に対しては,受信者側がその行動に意味を見出してサインを理解し共有することにより二者関係が成立する可能性があるのではないかと思われた。
- 北海道教育大学の論文
- 1988-03-15