十勝における「学校ぎらい」の実態調査 : 登校拒否の兆候をさぐる
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概要
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家出,盗み等の反社会的行動をとる子どもたちの増加及びその低年齢化傾向とともに,登校拒否・かん黙等の非社会的行動が問題となっている。いまや「学校ぎらい」は全国で,小学生が4,400人を超え,中学生では3万人に迫る出現状況をみている。この現状は,子どもだちから社会への様々な提言でありメッセージともいえるであろう。彼等は,初めは身体の不調を中心とした心気症状を訴え,人間の成長にとって最も重要な,友と遊び学び合うことを拒否し,引きこもり自閉的になり,やがて,退行現象や,家庭内暴力・自殺へと進み深刻化は限りない。登校拒否は,混合化,慢性化するに従って立ち直りもむずかしく,時間を要すると言われている。本研究は,十勝管内の「学校ぎらい」の出現状況を掴み,その誘因を探ることを目的とした。調査の内容は,性格特徴,学校条件,家庭条件に焦点をあてた。出現率をみると,小学校0.06%,中学校0.14%で全体では0.08%であり高学年ほど出現数は多かった。小学校で男子が女子の2倍,中学校では女子が男子の2倍の割合で出現し,単親家庭と市街地の学校での出現率が高くなっていた。誘因として考えられることは,無気力で引っこみ思案で忍耐力・決断力のない性格特徴と,その性格の形成に影響を与えている保護者の養育態度や家庭環境に問題が多く,また数例だったが,病気や怪我の後の復帰でつまずいた例もあった。学校では,友人が少なく,感情をあらわにせず,まわりの期待どおりに行動していることが多く,そのため変化に気づくのに遅れがちである。兆候としてのサインは,学習に向う態度が消極的であり,友人ともほとんど話しをしなかったり,リーダー的な立場に立つことはない等だが,大きな変化としてはとらえにくい場合が多く,見のがしがちである。家庭や学校では子どもの微妙な変化を見抜く感性をみがいて,接していくこと,その変化に素早く対応できる体制を日常化しておく必要性が更に求められよう。
- 1988-03-15