障害児の描画 : 形態表現と色彩にかかわって
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概要
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本研究は,精神薄弱養護学校児童・生徒の「人物」「バス」の描画をもとに,描画形態・スクリブル方法(なぐり描き)・色彩使用数・描画発達段階について分析考察したものである。描画発達段階は,筆者作成の基準からみると,知能の程度別では,軽度のものは形態について詳細に描いたものが多いが,重度のものは主にスクリブルで表現形態の低いものにとどまっていた。スクリブルについていうと,線がき(縦・横・斜め)のものが多く,円形スクリブルといったものはきわめて少なかった。また,線がきスクリブルの前段階である点がきも数例みられた。形態表現の構成についてみると,知能の程度別では軽度のものほど,また,学年別では学年が進むほど描画にち密さが加わり,形態表現が豊かになる傾向があった。色彩使用数は,スクリブルでは1色で描いてある作品が多く,描画形態がしっかりしたものになると使用色数が増え,色彩が豊かになっているのが注目される。描画指導は,1回目は簡単な言葉がけ,2回目は「目は」「口は」「耳は」といったようなくわしい言葉がけをした。その結果,重度のものには変化は認められないが,軽・中度のものでは,くわしい言葉かけて作品に新たな形態が表現され,均整がとれたていねいな作品群が生まれた。このことはきわめて重要なことである。この点からも今後は,描画活動と言葉がけ相互の連関について研究を進めなくてはならない。
- 1986-03-15