数概念の形成に関する一考察 : 自閉児の準数概念の指導から
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概要
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今回の「数概念の形成」は,2年目の研究である。前回,本課程4期生である吉川の「自閉児は,数詞と集合数との対応がじゅうぶんにできなかった」との反省にたち「数詞を導入する以前に獲得しなければならない基本的な内容-準数概念」に焦心をあてて研究をすすめることにした。準数概念というのは,数概念の低次な基礎概念とみられるもので,抽象数にまで至らない段階の意識活動であり「個別化(弁別)」「類別」「同等性」「保存」を包括したものを対象としているが,健常児では,これらが小学校入学前に自然に形成されているものである。しかし,自閉児にとってはこの準数概念が,じゅうぶんに形成されていないと考え,健常幼児や精神遅滞児の数量教育についての先行研究を参考にして指導内容を工夫してみた。また,自閉児の思考等の特徴を明確にするために,健常幼児や精神遅滞児を比較対象にして,以上の三者に指導を試みることにした。10月から11月にかけて,三者に指導し,その特徴をまとめてみたが,抽出された自閉児は,はめこみや,形をかいた台紙の上に同じ形を重ねることはできるのであるが,「同じ」「同じでない」などの概念が形成されていないことや,「同等・多少比べ」で1対1対応をすることまでは,教えられてできるのであるが,「あまったほうが多い」とか,「あまりがないから同じ」という判断はできなかった。また,「保存性や推移性」についても理解できなかった。しかし,指導後の検査では成績が向上しており,生活面でもお手伝いをすることなどが向上してきている。今後は,これを基礎として,数詞を導入して集合数との対応を指導する方法を研究していきたい。
- 北海道教育大学の論文
- 1986-03-15