自閉児の常同行動に関する一考察 : 言語能力水準との関連から
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
自閉児と接していく時に,その関わりの妨げとなるものの1つに常同行動がある。この常同行動のために,周囲の人々に奇妙に思われることも多い。本研究では,人間の行動に伴ってある場合には相対的に自律して,行動を統制する力を持つとされる言語が,常同行動の表出にどのように関連するものか。また,言語能力水準の違いによって表出される常同行動に何らかの差異が認められるか,を検討し,自閉児を理解する方策を得ようと意図した。常同行動については,Ornitzの記述,佐藤の常同行動調査表を参考にして31項目の調査表を作成し,言語能力水準については,提の自閉児用コミュニケーション行動評価表(CLCBAC)を用いて,24名の自閉児に対して,2名の評定者によって評定を行った。また,1人ひとりの常同行動の表出状況をみるために,2名の自閉児に対してビデオカメラを用いて常同行動を記録し分析を行った。これらの資料の分析から得られた結果は,1)対象児全体で検討した場合には,思考過程を経ないで短絡的・衝動的に表出される「徘徊」が最も多く表出されたこと,および数量化3類による分析結果から,対象児の発現している常同行動は表出性のものと受容性のものに分けられたこと。2)対象児を言語能力水準の差異によって常同行動発現状況を検討したところ,Non-verbal(無言語)群の方に有意に多く発現していたこと。Verbal (有言語)群の常同行動をとらえる時に対象物との観点から,自己の身体に求めるものと,外界に求めるものとに分けられたこと。3)Verbal群の言語能力水準と常同行動の対象を自己の身体に求めるか外界に求めるかでは,高い対応関係があったこと。4)常同行動出現に関して,児童をとりまく刺激成分の検討が必要であることなどであった。
- 北海道教育大学の論文
- 1985-03-15