重複障害幼児の行動観察に関する一つの試み
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概要
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本報告は,視覚障害に精神遅滞と聴覚障害を伴った重複障害児Yの指導の手がかりを得るために,VTRによる行動観察を試みたものである。観察場面は,プレイルームでの自由遊び,体育館での養護・訓練,教室での音楽の時間の3つで,各々30分ずつ収録して,分析資料とした。録画されたYの行動を文字化し,カテゴリー化を行なったものに行動生起頻度数を入れ,同時に,教師の働きかけがYの行動生起にどう関係しているのかに視点をあてて分析した。その結果,次のことが明らかになり,指導の手がかりになると思われた。(1)模倣行動と延滞模倣は教師のかかわり方によってその生起のしかだが異なり,そこから個別の1対1対応の有効性が認められる。(2)Yは視覚的な注意力が比較的機能しているので,身ぶりや指さしを媒介とした相互的なかかわりが,今後重要だと考えられる。(3)Yには教師との間に視覚的な最適距離があり,ことばを生起させるためにも,最適距離を考慮した指導が必要だと考えられる。
- 1991-03-25