<原著>放射線照射ヒト血清から発生する活性酸素種に対するエピネフリン含有塩酸リドカインの影響
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概要
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日常の歯科臨床で最も広く用いられているエピネフリン含有塩酸リドカインは(以後含エピネフリン塩酸リドカインと略す)は毒性が小さく,持続時間も比較的長いことから,欠くことにできない歯科用麻酔薬であるとみなされている。通常は73.8mM溶液として用いられ,70μMのエピネフリンが血管収縮剤として添加されている。図1に示す如くリドカインそのものは構造式中に2つのメチル基と2つのエチル基を有するアミド型を成し,含まれるエピネフリンは1つのメチル基を有するカテコールアミンである。従って,これらの基が生体内で遊離すれば,溶存酸素と反応してアルコキシラジカル(LO・)やペルオキシラジカル(LOO・)の発生を惹起する可能性を否めない。また,生体では,構成成分として脂質が存在するので脂質由来のアルキル基が遊離し,溶存酸素と反応して,脂質アルコキシラジカルや脂質ペルオキシラジカルを発生する可能性が考えられる。これらのラジカルは反応性が大きく,過酸化脂質の発生に重要な役割を成していると考えられている。一方,放射線によって,生体の水分子からヒドロキシラジカル(HO・)と水素ラジカル(H・)が発生する。ヒドロキシラジカルは拡散律速に近い早さで反応することから生体中の成分と種々の反応を経由して過酸化脂質の形成を惹起すると考えられている。従って,この系に塩酸リドカインやエピネフリンが共存すれば,発生するヒドロキシラジカルに何らかの影響を与えるものと考えられる。日常の歯科診療では,局所麻酔下でのエックス線撮影を避けることが不可能なケースも多く,エックス線照射によるラジカル発生と麻酔薬によるラジカル発生の関係を検討することが極めて重要であると考えられる。しかし,全身麻酔薬については活性酸素発生の面から比較的多くの報告が認められるものの,歯科用麻酔薬として用いる塩酸リドカインについての検索は,臨床的見地からのみ成されているのがほとんどであり,ラジカルの発生と関連づけたものは1件も見あたらないのが現状である。本研究では,含エピネフリン塩酸リドカインが,放射線照射ヒト血清から発生する活性酸素種に,どの様な影響を与えるかを検索することを目的とし,発生する活性酸素種の同定と発生量の変化をESRスピントラップ法で測定した。
- 北海道医療大学の論文
- 1998-06-30
著者
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