歯根と歯周組織の付着に関する実験的研究 : 付着に及ぼすクエン酸及び塩化第2鉄添加クエン酸処理の効果
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概要
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本研究は歯肉新付着における根面のクエン酸処理の効果を明らかにし, またクエン酸処理と10%クエン酸一3%塩化第2鉄溶液(10-3溶液)処理の効果を比較し, よりよい新付着を得る可能性を探ることを目的としている。イヌの臼前歯を用い, 露出させた歯根面にクエン酸処理あるいは10-3溶液処理を行ない, 歯根と歯周組織の創傷治癒過程を病理組織学的に比較検討した。その結果 : 1)術後1週では炎症が広い範囲に存在し, その程度は実験群の方が強かったが, 術後4週までに炎症は消失していた。2)根面の吸収は術後2週では対照群のほとんど全症例で処理面に吸収がみられたが, 実験群では殆ど吸収がみられなかった。3)セメント質の添加は術後2週以降残存するセメント質から歯冠側方向に伸長していく像が観察された。術後4週では実験群は処理部にもセメント質の添加がみられるようになり, 下方より伸長してきたセメント質と連続している例もあった。一方, 対照群は添加の全くみられないものから処理部を覆うものまで様々であった。術後8週では両群ともに上皮付着部, またはその少し下方までセメント質の添加が認められ, その厚さは10-3処理群で最も厚かった。3)歯槽骨の添加は両群とも術後2週ではノッチの中央程度まで, 術後4週では処理面の中央部程度まで, 術後8週では歯冠側グルーブ程度まで及び, 歯根面の形態に沿ってノッチやグルーブに突出する形態を持っていた。4)添加した歯槽骨と根面の癒着が, 術後4週の10-3処理群で1例, 術後8週のクエン酸処理群, 対照群で各1例観察された。5)処理面の線維の走行は術後2週まで根面に平行に走行していた。術後4週では斜走するものもみられ始め, 術後8週ではセメント質に入り込んで斜走する線維が多くみられるようになり, その傾向は実験群の方が強かった。6)歯肉上皮の深行増殖は両群とも同様で, 歯冠側グルーブで止まり, 処理面には入り込まなかった。
- 東北大学の論文
- 1989-06-30
著者
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