ラット切歯の由来の上皮, 間葉細胞株の樹立と組織再構成
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概要
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組織分化における上皮間葉相互作用の単純化された実験系として, ラット切歯を構成する上皮および間葉細胞をクローン化し, 両者からの組織再構成を試みた。切歯成長端から分離クローン化された上皮細胞は, 蛍光抗体法によりラミニンおよびIV型コラーゲン陽性で, 電顕観察によりデスモゾームと微絨毛の発達を認めた。間葉細胞は, 2本から数本の突起を延ばして線維芽細胞様形態を示し, 細胞の辺縁でラミニン, 1型およびIV型コラーゲン陽性であり, 電顕的に細胞外にコラーゲン線維束を認めた。上皮および間葉細胞を混合培養すると間葉細胞は上皮細胞集団の周囲で次第に盛りあがり小集塊を形成した。上皮細胞が作る細胞外基質は間葉細胞の増殖を促進した。間葉細胞は再構成コラーゲン中で強く収縮する性格を示し, 一方上皮細胞ではゲル収縮は軽度であった。回転培養により間葉細胞は1〜3日間で小集塊を形成し強い組織再構成能を示したが, 一方上皮細胞単独では小集塊を形成するが, 細胞間結合力は弱く, 軽いピペット操作で細胞は分散した。両者の混合回転培養により上皮組織と間葉を含む組織の再構成が可能であった。これらの結果から, この実験系が組織形成における上皮一間葉相互作用に関する分子的機序を明らかにする有力な実験系であることが示唆された。
- 東北大学の論文
- 1988-06-30