<原著>ラット切歯象牙質にみられる日周期性成長線の発達に関する組織学的研究
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概要
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様々な動物やヒトの象牙質には約1日を基調とする日周期性の成長線(サーカディアン成長線)が普遍的に観察される。本研究の目的は, この成長線が生後どの時期にいかに発現するかについて, 生物リズムの個体での発達という観点から明らかにすることにあった。実験には生後5日から50日までのラットを用い, これらの動物に硬組織内時刻描記法を施し, 切歯象牙質脱灰標本を顕微鏡下で観察することによって以下の結果を得た。1.5日齢のラットの象牙質内には, いかなるタイプの成長線も認められなかった。2.サーカディアン成長線は生後2〜3週にかけて徐々に発現し, 25日齢以上のラットにはすべての個体で認められた。3.サーカディアン成長線の発現に先立ち, 生後7日以降はすべての個体でウルトラディアン成長線(1日より短い周期のリズムからなる成長線)が認められた。4.生後2〜3週以後サーカディアンとウルトラディアン成長線が共存し重なり合っている所見が得られた。5.ウルトラディアン成長線は象牙芽細胞のlife stageの進行とともにその周期を更に短く変化させていた。6.サーカディアン周期の成長線の発達は生体のリズムを司る中枢機構と関連している可能性が高く, 一方, ウルトラディアン周期の成長線は象牙質形成における局所での何らかの振動現象と関連して生じる可能性が考えられた。
- 東北大学の論文
- 1994-12-28