北海道南西沖地震津波の新潟県における浸水高の分布
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概要
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1993年7月12日,北海道南西沖で発生した地震(M3=7.8)は北海道奥尻郡,島牧郡などの日本海沿岸一帯に大津波をもたらし,多数の犠牲者を出した.この津波は日本海全体に波及し,新潟県の海岸部もこれにさらされた.そこで新潟県の海岸で痕跡調査を行い,最大水位の地理的分布を得た.その結果,府屋,瀬波間,柏崎,直江津間でそれぞれ2-3mと高く,新潟西港,間瀬間で1.0-1.4mと低くなっている.佐渡では外海府で高く,内海府で低い.外海府では特に弾崎先端から10km以内で高く,2.6-3.1mである.これに対して内海府では0.8-1.2mである.両者の中間に位置する両津では1.1mでこれも低い.粟島でも外海測で3mに対して,内海側では1mで,外側で高くなっている.この最大水位分布の特徴を1983年日本海中部地震津波,1964年新潟地震津波の同県における最大水位分布と比較してみると,この津波は北北西,ないし北西方向から来襲したとして説明されるのに対し,日本海中部地震津波は北北東から入射したとして説明される.一方,新潟地震津波は県内に波源域があって入射方向は観測点によって異なるが,東西方向に放射された波が振幅が大きかったとすると説明できる.本州海岸の水位分布をみると,佐渡の遮蔽効果が認められるのにたいして,粟島の背後では周囲より高いことから,島による収束効果が働いたためとみられる.この違いは島のサイズの違いによると考えられる.また県内の験潮所で得られた験潮記録を送付してもらい,第一波の伝搬時間を求め,波面を逆算した.これにより第一波は北西方向から来襲していることが確かめられた.最大水位分布の特徴を説明する津波の来襲方向と第一波の来襲方向は一致している.また地域ごとに最大水位と遡上距離の関係を調べた結果によると,最大水位は遡上距離に無関係に一定値を取る.A field survey was conducted along the coast of Niigata Prefecture for the 1993 Hokkaido Nansei-oki Earthquake Tsunami of July 12, 1993. The maximum trace levels were measured with help of interview data. As the result a geographical distribution of the maximum height was obtained along the coast of Niigata Prefecture, Japan. A shadow- effect of Sado Island was observed at Maze on Honshu and focusing effect of Awashima Island was observed at Kuwagawa on Honshu.
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