S-310-25 号機による夜間 Es 層の電子密度不規則構造の観測結果
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概要
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MUレーダ観測により発見された夜間のE層からの準周期エコーの原因を解明することを目的とするSEEKキャンペーン観測が, 1996年8月に実施された。この期間に2機の観測ロケットが発射されたが, そのうちの1機S-310-25ロケットに固定バイアスのラングミュアプローブを搭載し, Es層に伴う電子密度の小規模不規則構造の観測を行った。ロケットは種子島に設置されたFrequency Agile Radar (FAR)により強い準周期エコーが観測されている最中の23 : 00 JSTに発射された。観測結果は以下の通りである。1.ロケット上昇時の高度90-130kmの範囲で, 大振幅の不規則構造が観測された。高度103-104kmにダブルピーク構造の発達したEs層が存在し, その上下の高度92km, 114km, 及び126kmに小規模なEs層が11-12km間隔でほぼ等間隔に存在していた。さらに, 高度103-111km, 及び120-130kmの範囲に2-4kmのスケールの周期的で大振幅な不規則構造が発生していた。下降時に観測されたEs層, 及びこれに伴う不規則構造はかなり弱いレベルのものであった。FARにより観測された準周期エコーの強度もロケット発射後急激に衰退しており, ロケットの上昇時と下降時の電子密度不規則構造の観測結果と良く対応している。2.電子密度不規則構造のうち, FARが観測する送信波の半波長スケールの電子密度変動成分の高度分布を求めた結果, それらは高度的に11-12kmの間隔で周期的に存在するEs層に伴って同じ周期で発生していることがわかった。従って, FARの準周期エコーはこれらの周期的不規則構造からの散乱によるものと考えられる。
- 宇宙航空研究開発機構の論文