<原著>時代背景からの老人理解の試み : 教育勅語にもとづく戦前の教育を中心に
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概要
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戦前の教育は「教育勅語」を根源とし,絶対性をもってわが国の教育理念を規制した。今日の老人は,幼児から成人まで,一貫して系統的にこのような教育を受けており,思想や信条,価値観に与えた影響は大きいと考えられる。故に,老人の心理を理解するには,戦前の教育を知ることが重要である。教育勅語では,親への「孝」と天皇への「忠」という徳目が重視され,忠孝一致の倫理観から,忠君愛国精神が啓蒙されるとともに,思想の統制がはかられた。教育はそれを受けた者の心の働きを通して長く力を発揮すると言われる。社会の変動に伴い戦前の価値観の違いや落差に,感情の埋め合わせができないまま過ごしている人も少なくない。老人の「お上の世話にはなりたくない」「時代が変わったのだから言いようがない…」などの呟きにある心情や,いわゆる老人の特性を表す「頑固」,「一本気」,などは,生きてきた時代背景や教育を知ることにより,理解の道が開けるのである。
- 足利短期大学の論文
- 1995-04-01