MMPIにおけるfakingの逆説効果と項目内容の異常性判断との関係 : D尺度について
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概要
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MMPI抑うつ尺度項目を, 採点キー側回答が推測しやすいobvious項目と, 推測しにくいsubtle項目に分類すると, faking教示下ではobvious項目は被検者の意図する側へ, 即ちfake good条件においては抑うつ得点が低くなる方向へ, fake bad条件においては抑うつ得点が高くなる方向へ回答が変化した。しかし, subtle項目は被検者の意図する側とは反対側へ, 即ちfake good条件においては抑うつ得点が高くなる方向へ, fake bad条件においては抑うつ得点が低くなる方向へ回答が変化した(木村, 1987b)。本研究はこれと同等の現象が, 木村(1987b)で用いたようなsubtletyの指標ではなく, 項目の一般的な精神的異常性を表わす指標を用いた場合にも認められるか否かを検討した。この現象をreversal現象と呼び, reversal現象の一部である「精神的におかしいと判断されない項目においては意図とは逆の方向に回答する」ことを, 「逆説効果」と呼んだ。精神的異常性の指標として2つの指標を用いた。一つは「はい」, 「いいえ」のうち, どちらに答えると「精神的におかしい・問題がある」かの判断に基づく指標である。もう一つは, 項目に「あてはまる」または「あてはまらない」と答えることが「どれくらい精神的におかしい・異常であるか」の評定に基づく指標である。その結果, どちらの指標を用いた場合も, reversal現象はfake bad条件においては生じたがfake good条件においては生じなかった。これは逆説効果が生じていないためであった。精神的異常性の測定値と標準教示における抑うつ採点キー側回答率との間に高い負の相関があり, 異常性が低い項目については標準手続きにおいて既に高率で採点キー側へ回答されているので, fake good教示によって, より以上に高い得点をとる余地がないことが原因ではないかと考えられた。
- 金沢大学の論文
- 1988-12-25
著者
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