<原著>ラット胎仔の脊髄再生に関する実験的研究
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概要
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胎内手術によるラット胎仔の脊髄損傷モデルを作製し, 免疫組織化学的手法を用いてグリア細胞の変化を経時的に観察した。成熟ラットにおける脊髄損傷を対照手術群として比較を行い, 両者におけるグリア細胞環境の相違を探ることを本研究の目的とした。脊髄損傷部において, 対照手術群では活性化されたアストロサイトの経時的な増生がみられたが, 胎内手術群では活性化されたアストロサイトは術後3日および7日の損傷後早期に僅かにみられるもののその後速やかに消退していた。対照手術群では術後21日および35日で脊髄損傷部に瘢痕形成がみられたが, 胎内手術群では認められなかった。また損傷部において, 胎内手術群では類円形のマクロファージ様の細胞が術後3日および7日の損傷早期にみられ, その後は消退していたが, 対照手術群では術後3日から21日まで認められた。胎内手術群ではマクロファージ様の細胞による破壊された組織の貪食, 処理が短時間で終了するためと考えられた。さらに損傷部では胎内手術群において術後21日および35日で脊髄の連続性を有するものには静止型のミクログリアがみられたが, 脊髄の連続性を有しないものでは静止型のミクログリアは認められなかった。損傷部より頭側および尾側に5mm離れた部分では, 対照手術群において術後21日および35日で白質に反応型ミクログリアが認められたが, 胎内手術群では認められなかった。胎内手術群ではワーラー変性が起こらないため, 反応型ミクログリアが出現しなかったと思われる。本研究により神経再生に関するグリア細胞の役割が, グリア細胞自身や周囲の細胞の成熟度, 損傷部位, 損傷部周囲の状況などの要因で変化する可能性があること, および脊髄損傷後に生じる活性化されたグリア細胞の速やかな消失が損傷した中枢神経の修復に重要な意味を持つ可能性があることが示唆された。
- 広島大学の論文
- 2001-12-28
著者
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