第30次南極地域観測隊越冬隊員の心身両面より見た健康状態の推移とその問題点について
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概要
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第30次南極観測越冬隊員に対し, 越冬前後と越冬各期間に医学的諸調査を施行し, 特殊環境下での身体的精神的健康状態の推移を検討した。心身調査項目としてCMI調査表, Y-G検査, エゴグラムを使用した。身体的検査項目としては標準12誘導心電図, ホルター24時間心電図, 血圧, 血液一般と血中コルチゾール値を測定した。大きな疾患の発生はなかったが, 全期間を通じてさまざまな心身の愁訴が認められた。精神的には越冬中期で積極性の低下, うつ傾向などが出現し, それらは経時的に変動した。ホルター24時間心電図では昼夜リズムの消失が一部で認められた。血中コルチゾール値は様々な変動を示し, その上昇は何らかのストレスの関与が考えられた。総蛋白, アルブミン, ヘマトクリットはいずれも低下した。それ以外の標準12誘導心電図, 血圧, 血算, 生化学検査には著変は認められなかった。越冬期間中のこれらの変化には気候条件, 太陽リズム, 閉鎖的小集団生活, 食事内容など各種の因子の関与が考えられた。
- 国立極地研究所の論文
- 1991-07-30