<翻訳>カール・レンナー『国家と民族』(上)
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概要
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カール・レンナー(Renner, Karl 1870~1950)は、オ-ストリア社会民主主義運動を代表する人物で、第一次世界大戦の後にオーストリア共和国初代首相を、第二次世界大戦の後には第二共和国の大統領をつとめた。オーストリア社会民主党は1899年9月に民族問題に関する有名なブリュン綱領を採択した。ブリュン大会に先立っておこなわれた民族問題に関する議論をリードした論客の代表がレンナーであった。レンナーは1899年2月9日に民族問題に関する講演をおこない、ブリュン大会の後にシノプティクス(Synopticus)という偽名で小冊子の形で出版した。ここに訳出した『国家と民族』がそれである。この著作のなかでレンナーは地域原理と個人原理を区別するオーストロ・マルクス主義に特徴的な民族理論を展開した。レンナーの民族理論は、その後オーストリアの後輩オットー・バウアーに継承されるとともに、ロシアのボリシェヴィキから厳しい非難を浴びた。レンナーの民族自治の構想はその当時には実現されなかったが、EUの先駆をなすものであったという評価もある。日本でレンナーの民族理論について検討した文献としては、須藤博忠『オーストリアの歴史と社会民主主義』(信山社、1995年(および倉田稔「レンナー」(丸山敬一編『民族問題―現代のアポリア―』ナカニシヤ出版、1997年、第三章)がある。ほかに日本語文献として、法学関係で二種類の翻訳がある。後藤清訳、カルネル(偽名)『法律制度―特に所有権の―社会的機能』(叢文閣、1928年)、加藤正男訳『私法制度の社会的機能』(法律文化社、1968年)。訳出の底本は,Synopticus, Staat und Nation: Zur österreichischen Nationalitätenfrage: Staatsrechtliche Untersuchung über die möglichen Principien einer Lösung und die juristischen Voraussetzungen eines Nationalitätengesetzes, Mit einer Literaturübersicht, Verlag von Josef Dietl Buchhandlung, Wien, 1899である。テキストの入手については相田慎一氏にお世話になった。記して謝意を表します。
著者
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