<調査>バングラデシュの氾濫原における内水面漁業の営み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
バングラデシュでは季節的に形成される氾濫原を利用して農業とか漁業が営まれ, それらと関わりながら生活の営みがなされている。本稿ではまず, 洪水に伴って形成される氾濫域の状態と, 内水域における内水面漁業を国全体の視点から素描する。次いで, 漁村の経済的活動を明らかにするため, 国を縦貫して流れるメグナ河流域に位置するコミラ県と, その支流域に位置するブラーマンバリア県の漁村を調査対象地として選定し, 個別世帯の経済調査と漁業ならびに生活についての意向・意識調査を1996年9月と1997年3月に実施した。調査は, 漁業だけでなく, 地域内には農業を営む世帯も多いので土地利用と農業生産についても調査し, これらの村の概要と, そこで生活する人々が従事する生業と生活の営みにおいて直面する諸問題の内容を探り, 今後の開発・発展において改善が望まれる政策課題を示すことを試みた。調査結果からは, 同じ氾濫原にあっても2地区として共通あるいはそれぞれの特徴として以下の諸点が明らかになった。(1)漁業に就業できる機会が多い下流域という立地条件(ダウドカンディ)の漁業者の収入は高く, 漁業に就業する機会が限定される漁業専従者や農業を営む土地を所有・耕作している上流域(ブラーマンバリア)での世帯の収入は相対的に低い。(2)両地区ともヒンドゥ住民はイスラム住民に比べると農地や漁船・漁具などの資本装備が劣っているので, 前者の収入は後者のそれに対して相対的に低い。(3)上流域の氾濫原に位置する地区では, 専ら漁業に従事する世帯の資本装備は零細であり, 彼等の1世帯当たり収入は, 農地を所有・耕作している中農の収入に比べると低く, 生活水準も低い水準に留まっていることが明らかになった。(4)両地区の漁業と水域に関わる問題点として, 漁業生産の減少だけでなく, 環境の汚染が広がっており, それらの防止に努め, 魚・エビなどの増殖・配布に対する支援措置が要望されていた。
- 1999-03-31
著者
関連論文
- アジアにおける都市周辺の農地利用に関する諸問題
- ブリン・グリーン 著 小倉武一 他 訳 『カントリーサイドを保全する』
- バングラデシュの氾濫原における内水面漁業の営み
- バングラデシュの農村振興における内水面漁業の役割