<原著>表皮細胞の最終分化産物の加齢による変化について
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概要
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高齢者の皮膚は若年者の皮膚に比して皮膚表面は夏においても乾燥状態となりやすく, 特にその傾向は下腿において著明である.そこで我々は50歳以上の高齢者群及び20歳以下の若年者群の各々の下腿と顔面の正常皮膚を材料とし, 表皮細胞の5種類の最終分化産物(蛋白)に対する抗体-抗filaggrin抗体, 抗prosaposin抗体, 抗sphingomyelinase抗体(抗SMase抗体), 抗involucrin抗体, 抗loricrin抗体を用いて免疫組織化学染色を行い比較検討した.その結果, 顔面部皮膚においては, prosaposinとsphingomyelinase(SMase)の発現量が若年者群に比して高齢者群では有意に低下していた.一方, 下腿部皮膚においては, この2つの蛋白に加えて, 顔面皮膚で両群間に有意差の無かったfilaggrinの発現量も若年者群に比して高齢者群では有意に低下していた.Involucrinとloricrinの発現量は顔面部皮膚, 下腿部皮膚共に両群間の発現量に有意差は認めなかった.これらの結果より高齢者皮膚の易乾燥性には表皮内細胞間脂質の合成能の低下が大きく関与しており, さらに下腿ではfilaggrinの発現量低下による保水因子の量の低下も加わって顔面皮膚などに比し容易に乾燥しやすくなることが示された.
- 近畿大学の論文
- 1999-06-25