<原著>Photopic electroretinogramの消失現象を起こす光刺激について : 第2報 : 糖尿病網膜症における検討
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概要
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刺激光の発光開始から最大輝度に至るまでの時間(up-slope時間)および最大発光時から消灯に至るまでの時間と各々の波形を任意に設定できる網膜電図(electroretinogram, ERG)用の新しい光刺激装置を試作した.この光刺激を用いてphotopic ERG(slope ERG)を記録すると, 正常眼ではslope時間の延長に伴って徐々にERG波形振幅の低下, 頂点潜時の延長が見られ, 最終的にERGの消失現象が見られることを第1報において報告した.本研究はslope ERGの糖尿病網膜症における有用性を検討するために, 38例38眼の糖尿病患者を対象にslope ERGを記録した.38眼中32眼が網膜症を有する症例(DR群), 6眼は網膜症をみとめない症例(NDR群)であった.得られたERGの頂点潜時を計測し, 正常対象者7例7眼における測定結果と対比させた.DR群ではup-slope時間を延長するに伴い, 正常群との頂点潜時の差が拡大した.頂点潜時の差は進行した網膜症を有する症例ほど顕著であり, いずれも矩形波光によるERGよりも明確であった.NDR群では6眼中2眼で正常群の結果を上回る頂点潜時の延長が見られた.DR群で得られた結果から, slope ERGは糖尿病網膜症における網膜機能障害を知る上で, 矩形波光刺激を用いた従来のERGよりも鋭敏な指標になりうると思われた.NDR群における結果は, 眼底検査で異常が見られない軽微な網膜機能異常もslope ERGで検出できる可能性を示唆している.slope ERGは, さらなる研究によって糖尿病網膜症の早期発見のための検査法の一つとして確立しうる可能性がある.
- 近畿大学の論文
- 1999-06-25
著者
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