<原著>頭頸部腫瘍のカテプシンL, シスタチンA活性と浸潤度, 転移度, 病理像との関連性
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概要
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システインプロテアーゼであるカテプシンLは, 基底膜や脈管壁を構成するコラーゲンやエラスチンに対する分解作用から, 悪性腫瘍の浸潤, 転移との関連性が注目されている.そこで甲状腺癌, 耳下腺癌および頭頸部領域の扁平上皮癌に対してカテプシンL活性を測定した.その結果, 甲状腺癌は正常組織, 瀘胞腺腫に対し, 耳下腺癌は正常組織, 多形腺腫に対しいずれも有意に高値であった.扁平上皮癌は良性腫瘍の鼻腔乳頭腫とは有意差を認めなかったが, 正常組織に対し有意に高値であった.しかしリンパ節転移症例でカテプシンL活性はむしろ低下傾向を示した.そこでカテプシンLのインヒビターであるシスタチンAとの関係を検討した.シスタチンAはimmuno blottingの結果において甲状腺癌, 耳下腺癌は検出限度外であったが, 扁平上皮癌ではdensityの高いバンドが認められ, リンパ節転移症例はカテプシンLとは逆に特に高値を示した.さらに増殖度との比較を行いカテプシンLとシスタチンAの動向を検討した結果, カテプシンL活性は増殖度の低い発癌初期では高値を示したが, 以後増殖度の増加に反して低下傾向が見られた.逆にシスタチンAは増加傾向を示し, カテプシンLに対する阻害作用が示唆された.以上の結果から癌細胞におけるカテプシンLの発現部位と, インヒビターとの均衡が重要であると考えられた.即ち, 発癌初期に細胞外へ発現したカテプシンLはマトリックスを破壊し癌細胞の浸潤, 転移に関与するが, 細胞内では増殖に対して本来制御的役割を有する.しかし, 以後細胞内でシスタチンAが誘導されるとカテプシンLは低下し, この結果さらに癌細胞は増殖を続け浸潤, 転移に促進的に作用するものと考察した.また今回定量化に至らなかったが, 甲状腺癌, 耳下腺癌ではシスタチンA同様にカテプシンLのインヒビターであるRasが確認されており, 今後さらに検討を要すると考えられた.
- 1997-06-25
著者
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