<原著>MyoD強制発現により筋肉転化したヒト非筋細胞の分化過程 : ラット胎児脊髄運動神経細胞による実験的神経支配を経て
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
MyoDは, 筋発生制御因子といわれる遺伝子群のひとつであり, 種々の非筋細胞を筋細胞に形質転化することが可能である.本実験では, MyoD retrovirus vectorを使って, ヒトamniocyteとヒトfibroblastを形質転化し, その後これらの細胞が, 本来の筋細胞と同様に機能的, 形態的成熟筋線維に分化してゆくことが可能か否かを培養中で観察した.転化細胞は, 転化後, ラット胎児脊髄組織と同時培養し, innervationを試みた.同時培養後2〜3週から, 横紋を有し, 収縮運動をする筋線維が認められるようになり, 更に2〜3週の経過で, それらは更なる分化を示した.また, アセチルコリンエステラーゼ細胞化学とα-bungarotoxinを使ったアセチルコリンセレプター標識を同時に行って見ると, 神経筋接合部が明らかに染出され, innervationが確実に起こったことが確認された.生化学的分析によれば, amniocyte由来の転化細胞から分化した筋線維における全creatine kinaseの約1/2は筋特異アイソザイムが占めており, 本来の筋芽細胞から分化した筋線維と殆ど相違を認めなかった.結果的に, innervationによって筋培養細胞は, より長いlife spanを得ることができ, 分化が進むことが示された.この筋神経同時培養のシステムの利用は, 筋分化の全過程を可視化し, 筋分化研究の新方法として, 採用され得ると考えられる.更に, 遺伝的かつ稀な筋疾患の研究に, 何らかの理由で筋細胞自体が利用不可能な場合にでも, 非筋細胞を使って研究を進められるという意義は, 無視できないと考えられる.
- 近畿大学の論文
- 1996-06-25
著者
関連論文
- 436 良性食道狭窄疾患の食道筋層神経叢の組織学的検討(第30回日本消化器外科学会総会)
- 骨格筋切断後における筋線維再生現象の組織学的観察
- 131. 悪性中皮腫の手術例 : 特に胞体内フィラメント構造について(総合6 中皮, 一般講演・口演, 第26回日本臨床細胞学会学術集会)
- 6.末梢神経再生に関する研究(1)コラーゲンゲルの影響
- II-27 正常時の血管内皮細胞表面におけるレクチンの反応性に関する実験的研究
- 上膵十二指腸動脈瘤破裂により十二指腸閉塞症をきたした1例
- 悪性リンパ腫との鑑別に穿刺吸引細胞診が有用であった壊死性リンパ節炎の1例
- 松果体細胞腫の1例
- 精索静脈瘤における挙睾筋の検討
- 剖検における心臓真菌症27例の臨床病理学的検討
- 10.後根症状と下肢麻痺で発症した急性リンパ性白血病
- 播種性トリコスポロン症の1例
- アスペルギルスの判定に細胞診が有用であった1例
- 1B2 ラット坐骨神経の切断後再生時におけるtubulinの免疫染色性について
- III-48 ラット脳血管内皮細胞のアクチンに関する免疫組織化学的検索
- 肺結核治療後の胼胝状胸膜炎に発生した悪性リンパ腫の1剖検例
- 9.ミトコンドリア集積を認めたネマリンミオパチーの1例
- 86.トリコスポロン属真菌と他の真菌との細胞診における菌形態の比較(骨・軟部組織, 一般講演・口演, 第31回日本臨床細胞学会総会学術集会)
- P-30 モノクローナル抗ラット脳アクチン抗体の正常ラット脳組織への反応 : 光顕及び電顕金コロイド法の検討 (神経)
- IB-18 脳虚血後の細胞骨格蛋白, 特にアクチンの変化について
- 3.実験的ラット脊髄梗塞モデルにおける形態学的変化について
- 6.モノクローナル抗ラット脳アクチン抗体の正常ラット脳組織への反応 : 電顕金コロイド法のオスミウム酸固定による影響の検討
- MyoD強制発現により筋肉転化したヒト非筋細胞の分化過程 : ラット胎児脊髄運動神経細胞による実験的神経支配を経て
- 腹部大動脈に限局した解離性大動脈瘤の1例
- 3.モノクローナル抗ラット脳アクチン抗体の正常ラット脳組織への反応 : 光顕および電顕金コロイド法の検討
- 2.骨格筋壊死・再生時におけるラミニンの動向
- 1.ラット骨格筋切断後の線維再生現象
- Gap Junctions between Fibroblasts in Rat Myotendon
- 18年の経過で精神, 神経症状を呈した水頭症の病理学的所見
- 拡張型心筋症の1例における各種の心不全治療法の経験
- IA-13 ラット脳アクチンに対するモノクローナル抗体の作製と組織切片への応用