無花果 Ficus carica L. の実腐病について(農学部門)
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概要
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1958年10月初め筆者の一人葉は, 京都府立大学農学部果樹園で半分程黒く腐敗していたFicus carica L.の果実を発見採集し, それが未知のMacrophoma sp.に因るものであることを確めた。本病原菌は馬鈴薯煎汁寒天培地や他の使用した培地上でも柄子殻の始原体と見倣されるSclerotiaようの組織はできるが未だに分生胞子の形成を見なかつた。しかし, 樹上果実の有傷接種区では1週間位になると自然状態と同様の病徴と分生胞子を形成し, さらに白い胞子角を噴出した。本菌の菌糸生長最適温度は28℃附近で, pHの最適濃度は4.2∿4.8辺りのようであり, また, 高温に対する菌糸の致死抵抗限界は45℃附近で20分間以上の辺りにある。紫外線殺菌灯の照射処理をすると, 初めは長時間程生長を抑制するが, 次第に回復してついには30分照射区が最も良好な生長をなした。接種試験では有傷接種区においては何れも100%の罹病率を示したが, 無花果の果実, 同2年生枝, 蜜柑果実等の有傷接種区にありては強い病原性を示し, その他の苹果果実, 緑茶茶葉等の有傷接種区にありては弱い病原性を示した。標準区は有傷, 無傷共に陰性であつた。本病は現在迄の調査によると日本においては未だ報告されていないものと思われるので, 「無花果の実腐病」なる新和名を提案したが, その病原菌の詳細な同定は未だ決らないので, その学名は暫らく保留することにしてここでは仮にMacrophoma sp.とする。
- 京都府立大学の論文
- 1960-09-01
著者
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