<論説>シロネズミ肝に於けるレチノール・エステル化酵素とビタミンA含量に関する組織化学的研究. (II)
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概要
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ライソソームを不安定化させる物質のうち,ビタミンAは生理学的に最も重要なものと考えられる。しかしライソソームに効果のあるものはビタミンAでもアルコール型(レチノール)のみであり,そのエステルには何の作用も認められない。それゆえにビタミンAの貯蔵器官である肝臓においてビタミンAの95%以上がエステル主としてパルミテート,として存在していることは極めて合目的な現象と云える。ちなみに,蓄えられたレチノール・パルミテートは水解されてレチノールとなり血中に放出されると云われている。筆者はライソソームの安定性を支配する内在性要因の追及を究極の目標としてまずその第一段階として,肝細胞が含有している筈のレチノール↔レチノール・パルミテートの変換に関与する酵素の証明を試み,次にその酵素の活性が種々の異った環境下でどのように変動するか,またその変動と肝細胞の含有するレチノール量,全ビタミンA量の間にどのような関係があるのかを調査することにした。以上の結果から次のことが結論される。正常個体においてはREE活性は可成り安定した値を示しそのため肝V. A総量も一定に保たれている。ところが多量のVitamin Aを投与した場合には,基質による誘導が起こり肝Vitamin A総量は著しく増加する。逆に長期間に亘るV. A欠乏状態においては肝V. A,酵素活性共に低下する。いずれの場合においても極度のVitamin A過多の場合を除レチノール量は,常に4%に保たれている,しかしながらアゾ色素投与においてはREE活性がさほど低下していないにも拘ず肝V. A量は低下し,さらに絶食においては反対にREEが著しく低下しているにも拘ず肝V. Aが増加するという異常が生ずる。いずれの場合にもレチノール量は正常より増加している。以上のことからREEが肝V. A総量およびレチノール量の増減に重要な役割を担っていることを示す一方これらの増減を支配しているものがREEのみでないことも示している。その点今回の実験で不成功だったレチノール・パルミテート水解酵素の証明法が確立すれば更に詳細な分析が可能になると思われる。
- 1981-03-31
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