山路の露注釈(十)
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概要
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平安末期または鎌倉初期に,『源氏物語』愛読者により,「夢の浮橋」の巻後日譚として創作されたのが,「山路の露」である。文章は至って流麗。『源氏物語』に精通した読者の筆になる作品であって,近時「世尊寺伊行」の女「建礼門院右京大夫」を,その作者とする説が提出されている。本注釈は流布本(『続群書類従』物語部所収)を底本にし,「補記」の頂にいささか重みを置いた。本稿に収めた各段の梗概は次ぎのごとくである。髪をおろした浮舟を前に,乳母子の右近は胸のうちを涙ながらに語り,いかなる折にも,決して姫君に遅れまいと心にきめていたものをと,尽きることのない深い悲しみに泣きくずれるのであった(二十八 五重)。右近から薫の愛情の深さに聞くにつけ,浮舟は薫・匂宮という二人の男性の間をゆれ動いたわが心のうちを思い見,これも前世からの報いであったのだと,しみじみ悟るのである(二十九 人目)。いよいよ下山するに至って,浮舟の母は娘を都に連れて帰ろうと言う。だが,浮舟は今更の思いがして帰京の話にのって来ない(三十 客人)。
- 2002-03-06
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