Recherche de la sagesse pour heureux : la Lettre-Preface des Principes de la philosophie
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概要
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本稿では,『哲学原理』「フランス語版序文」に見られるデカルトの道徳観を明らかにすることを目的とする。1647年,デカルトは,1644年にラテン語で出版された『哲学原理』のフランス語版の出版にあたり,翻訳者のピコ神父に宛てて,序文がわりとなる「訳者への手紙」を書いた。この書簡は,他の著作においてはなされていなかった,デカルトの学問体系の構造,とりわけ学問的な知と日常的な道徳との関係を明らかにしている点で重要である。この「フランス語版序文」において示された「知恵」の諸段階は,真理が神の存在に依存していることにより,諸学を学ぶためにはまず形而上学の知識が必要となることを示している。この一方において,デカルトは,「哲学の木」の比倫に見られるように,形而上学に支えられた「最も完全な道徳」の可能性を示している。しかし,このような完全道徳はあくまで理想であって,現実には実現が困難である。そこで,デカルトは,「原理」に従ったことから得られる「効用」を示しているが,これらは,「哲学の木」の「果実」である完全道徳に代わりうるものであり,そこには彼の道徳観の主意主義的かつ楽観的な性質を見ることが出来る。『哲学原理』「フランス語版序文」は,デカルト哲学において,学問的な知と日常的な経験に基づいた道徳とが結びつけられたことを示している。
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