<原著>現代アメリカ前衛舞台芸術におけるインターカルチュラリズムの諸問題について
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概要
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本稿では,西欧近代演劇における異文化受容の概念の歴史的背景を概観し,それが戦後アメリカの前衛舞台芸術に影響を与えた過程を考察する。その上で,異文化受容の諸問題を,現代芸術におけるポストモダニズムおよびオリエンタリズム等の概念を引き合いに指摘することを試みるものである。この考察の過程で,アジアの演劇を取り込もうと試みたアルトーとブレヒトの功績が,西欧近代演劇の理論と実践における,重要な突破口であったことが確認される。この二人が,ビート族やヒッピーの文化の洗礼を受けた,戦後アメリカの演劇人達に与えた影響も大きい。今日,いわゆるポストモダンといわれる時代にあって,インターカルチュラルな異文化受容の手法は,芸術領域において,その地位を確立したように思われるが,それにともない,例えばサイードがオリエンタリズムと規定して文化の問題を権力の闘争として論じたように,この現象を論じる新たな規範が希求されているといえる。
- 1995-03-25