<原著>The Warrior Ant : 80年代におけるリー・ブルーアーの模索
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概要
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本稿では,ベケット作品の翻案,Animation三部作等により,1970年代アメリカの前衛演劇史上伝説的な足跡を記した演出・劇作家リー・ブルーアーの最新作The Warrior Antの,1988年ニューヨーク公演を上演テクストとして,アリストテレスの叙事詩の定義,ブレヒトのEpic Theatre,文楽についてのロラン・バルトの言説を引き合いに検証し,特にそのnarrativeの様相を分析する。これにより,神話生成的な観点が,80年代の演劇人達に演劇をジャンルとして引き留める枠組として求められた必然性も確認できると考えられる。また,様々な概念や文化的記号の引用やパロディが,高級・低級,聖・俗,古典・現代の別を問わず,まさに無分別に,言語及び意味レヴェルにおいて,また視覚的,聴覚的に羅列され,これらの既製イメージの衝突により,さらなるイメージが喚起され,意味の生成,解体が繰り広げられるという特徴をもつこの作品の意義を,ポストモダニズム,インターカルチュラリズムという視点から,80年代アメリカ前衛演劇の文脈において考察し,位置づけを試みた。
- 1994-03-25