<原著>日本の芸術観における「魂」-[2] : 「鏡」に見る虚実の両義性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本には,「神」「仏」あるいは「魂」「情念」という,形無きものをあえて表現しようとした造形がある。それは受動的立場であるはずの「見る者」が同時に能動的な形造る行為をも両義的に持ち合わせていることを作者が見抜き,表現をできるだけ抑えて,後は「見る者」の見方にまかせるといった表現方法である。その最も極端な造形表現は,「神」や「仏」に自己の姿を重ね映す「鏡」であり,それから派生する「引目鈎鼻」や「能面」のいたって無表情な面貌,更には水墨山水画の「空白」の表現を挙げることができる。それは,日本人のアニミズム,すなわち万物に「魂」が宿るとするような「霊魂観」に,神道の神仏習合思想,仏教の「幻世観」,形無きものに本質をもとめる中国の老荘思想などが入り組み,形成されていったものと考察される。
- 山野美容芸術短期大学の論文
- 1995-03-25
著者
関連論文
- 日本の芸術観における「魂」-[2] : 「鏡」に見る虚実の両義性
- 日本の芸術観における「魂」-[1] : 「鏡」の神話性 : 忘我・模倣・一体化
- 神奈川県立博物館所蔵石清水八幡宮曼荼羅における「聖」と「俗」の表現