<原著>神奈川県立博物館所蔵石清水八幡宮曼荼羅における「聖」と「俗」の表現
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概要
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本作品は,これまであまり知られることがなかったが,石清水八幡宮を主題とした絵画作品の中では,他に類例のない「聖」と「俗」の表現が見られること,そして,その製作年代が中世期まで遡ると推定される点において美術史的に重要な作品である。描かれている景観は,社殿を真正面から俯瞰的にとらえ,中央の楼閣の屋根を境界線として画面を縦に1 : 3の割合で分割する構図となっている。したがって,この作品の主題が,「月次風俗画」の影響のもとに,「垂迹画」「社頭図」といった「礼拝画」「信仰画」の性格もある一方,世俗の参詣行楽者たちを描き入れているので,「寺社参詣曼荼羅」や「野外遊楽図」を予期させる。鎌倉時代の「大和絵」と比較すると,この作品は色調が明るく,明確な描写によって,平面的な印象を受けるが,それはまた図案化・意匠化された表現にもなっている。そして,人々の様子には,滑稽で大袈裟とも思われるような表情と仕草を持つ,とても日常的で人間的な姿が表現されている。したがってこのような特徴から,私はこの作品が南北朝後期から室町初期(14世紀後半から15世紀初頭まで)の製作と推察する。
- 山野美容芸術短期大学の論文
- 1993-03-25
著者
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