胃管での経管栄養を施行中に, 胃壁内気腫を伴う門脈気腫症を発症した血液透析患者の1例
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概要
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症例は78歳,男性.膜性腎症による慢性腎不全に対して加療中であった.平成22年5月心不全,腎不全の急性増悪のため緊急入院し,その後,血液透析を導入.2回にわたり人工呼吸器管理を要し,抜管後より嚥下機能障害を認めていたため,経鼻胃管での栄養を行っていた.入院6か月目,全身状態が安定した後に,それまで基準値内だった肝胆道系酵素の上昇がみられた.明らかな自覚症状はなく,バイタルサインにも著変はみられなかった.血液検査では軽度の炎症反応を認めた.画像検査では,腹部超音波検査で門脈内に点状の高エコー像を多数認め,ガスの混入が疑われた.また,腹部CTでは肝外側区末梢に樹枝状の低吸収域を認め,門脈気腫症が考えられた.原因としては,CTにて胃壁内ガス像がみられていたこと,胃管先端が胃壁に接触していたことから,胃管によるものと考えた.上部消化管内視鏡検査では,びまん性の胃粘膜障害と胃潰瘍を認めた.胃管抜去のうえ,絶食,抗生剤投与での加療を行い,肝胆道系酵素は速やかに改善した.また,明らかな自覚症状の訴えやバイタルサインの変動はなく,血液透析もそれまでと著変なく施行可能であった.発症18日目に経口摂取を再開し,門脈気腫症の再発なく経過した.門脈気腫症はさまざまな原因で起こる.今回,胃管が原因と考えられる門脈気腫症の症例を経験し,速やかな改善を得ることができたため,若干の考察を含めて報告する.
- 2012-08-28
著者
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鶴屋 和彦
九州大学大学院包括的腎不全治療学
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中山 勝
九州医療センター腎臓内科
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原田 直彦
九州医療センター消化器科
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鶴屋 和彦
九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学
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吉本 剛志
九州医療センター消化器科
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松浦 秀司
九州医療センター放射線科
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西田 佳奈子
九州医療センター腎臓内科
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浦 佳莉子
九州医療センター腎臓内科
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池田 裕史
九州医療センター腎臓内科
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