ブロー液を用いた外耳道および乳突腔真珠腫の治療
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概要
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ブロー液 (ブ液) は19世紀に開発された殺菌作用, 収斂作用のある13%酢酸アルミニュウムの点耳薬である. 20世紀後半に再登場し, 難治性慢性中耳炎に対し著効と耳毒性のないことが報告された. われわれはさらに, 他の慢性外耳道疾患にも有効と報告した. 目的: 中耳, 上鼓室真珠腫には無効とされるブ液を, 2例の外耳道真珠腫 (EACC) と1例の乳突腔真珠腫に使用し治癒したので報告する. 症例: 1例目は8歳, 男性, 外耳道後下部が陥凹し真珠腫のdebrisと骨露出を示す. ブ液の耳浴後真珠腫は消失し上皮化. 2例目は31歳女性, 主訴は左耳痛と味覚障害. CT上, 外耳道前壁の骨欠損と後上壁の骨破壊あり. MRSA検出. 外耳道内に肉芽, 膿, debris充満. debrisを除去し母膜は保存, ブ液耳浴, 1カ月後真珠腫消失上皮化治癒. 3例目は47歳男性, 過去に鼓室形成術を受けたが, 乳突腔真珠腫と肉芽が外耳道後壁にかけて拡がり, 排膿が持続した. ブ液の耳浴に変えて5カ月後真珠腫は消失し乾燥治癒した. 3例とも鼓膜穿孔無し. NaimらのEACCの病変の程度の分類によれば, 1例目はStage II, 2例目はStage IVに相当し, 2, 3例目は通常は手術の適応であるが, ブ液を使用して真珠腫は消失し治癒した. 結論: ブ液が有効な理由は真珠腫と液の直接接触と, 随伴する細菌感染と炎症の抑制によると推測される. 自他の知見からブ液の適応, 長所, 短所を考察した. さらに多数例につき検討を要する.
- 2010-06-20
著者
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大橋 正實
耳鼻咽喉科麻生病院
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原田 幸二
耳鼻咽喉科麻生病院
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寺山 吉彦
手稲渓仁会病院耳鼻咽喉科
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寺山 吉彦
手稲渓仁会病院
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寺山 吉彦
手稲溪仁会病院 耳鼻咽喉科
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寺山 吉彦
手稲渓仁会病院 耳鼻咽喉科
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寺山 吉彦
耳鼻咽喉科麻生病院
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坂田 文
耳鼻咽喉科麻生病院
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村田 保博
耳鼻咽喉科麻生病院
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