ガバペンチンの上位中枢を介する神経因性疼痛緩解作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
抗てんかん薬ガバペンチンは,欧米において神経因性疼痛治療薬としての地位を確立しているが,その作用メカニズムについては未解明な部分が多い.我々はその作用部位として上位中枢に焦点を当てた研究を行い,脳室内投与したガバペンチンが神経損傷(マウス坐骨神経部分結紮モデル)後の疼痛症状(熱痛覚過敏および機械アロディニア)に対し障害依存的な鎮痛作用を発揮することを示し,ガバペンチン全身投与後の鎮痛作用において,上位中枢を介する効果が大きく寄与することを見出した.ガバペンチンの全身投与あるいは脳室内投与によって引き起こされる鎮痛効果は,脳幹から脊髄へ下行するノルアドレナリン(NA)神経を消失させると大幅に減弱し,また,α2-アドレナリン受容体アンタゴニストヨヒンビンの全身投与や脊髄内投与によって同様に減弱した.脳室内投与したガバペンチンが脊髄腰部膨大部のNA代謝回転を神経障害依存的に促進させたことからも,上位中枢に作用したガバペンチンが下行性NA神経を介して脊髄内においてNA遊離を増加させ,α2-アドレナリン受容体を介した鎮痛効果を発揮すると考えられる.さらに,坐骨神経部分結紮による神経障害後に作製したマウス脳幹スライスの青斑核ニューロンにおいて,ガバペンチンはGABA性の抑制性シナプス伝達をシナプス前性に抑制することを明らかにした.Sham手術マウス由来のスライスではガバペンチンはこの抑制性シナプス伝達抑制作用を示さず,また,神経障害後でも興奮性シナプス伝達に対しては影響を及ぼさなかった.これらの研究結果より,ガバペンチンは青斑核においてGABA性の抑制性入力を抑制することによって青斑核ニューロンを脱抑制し,下行性NA疼痛抑制経路を活性化させて神経因性疼痛を緩解することが示唆された.
- 2009-12-01
著者
-
田辺 光男
名古屋市立大学大学院薬学研究科中枢神経機能薬理学分野
-
小野 秀樹
名古屋市立大学大学院薬学研究科中枢神経機能薬理学分野
-
高須 景子
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 中枢神経機能薬理学分野
-
小野 秀樹
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 中枢神経機能薬理学分野
-
小野 秀樹
名古屋市立大
-
高須 景子
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 中枢神経機能薬理学分野
-
田辺 光男
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 中枢神経機能薬理学分野
関連論文
- フルボキサミンの抗侵害受容作用と抗アロディニア作用は異なるセロトニン受容体を介する
- TRH誘導体タルチレリンの熱侵害受容に対する鎮痛作用は下行性セロトニン神経を介する
- 運動調節と下行性セロトニン神経系 (生体機能と創薬シンポジウム2005--疾病に関わる生体分子と治療薬) -- (シンポジウム1 神経系疾患にかかわる機能分子--基礎から創薬の可能性まで)
- Gabapentin の神経因性疼痛緩解作用機序 : 下行性ノルアドレナリン神経との関連
- 運動失調マウスの脊髄反射電位 : TRHアナログの作用と下行性ノルアドレナリン神経系の機能変化
- マウスにおける脊髄反射電位測定法の確立と薬物の作用
- 12P-6-03 筋弛緩作用における薬物相互作用の研究 : ストレプトマイシン、テトラサイクリン、ジルチアゼムおよびシメチジンの作用部位比較
- ガバペンチンの上位中枢を介する神経因性疼痛緩解作用
- 神経因性疼痛
- キーワード解説 神経因性疼痛
- ガバペンチンの上位中枢を介する神経因性疼痛緩解作用
- 多重比較 : 薬理データの統計解析における Bonferroni 補正法のメリット・デメリット
- 多重比較:薬理データの統計解析におけるBonferroni補正法のメリット・デメリット(動物の行動変化とその評価・解析)(第31回 日本行動計量学会大会発表一覧)
- Local Cerebral Glucose Utilization in Rats with Decerebrate Rigidity and Effects of Centrally Acting Muscle Relaxants, Diazepam and Tizanidine
- イミダゾリン受容体
- 中枢性筋弛緩薬Chlorphenesin carbamateの薬理学的研究 ―特に運動系に対する作用―
- 5-(o-Chlorophenyl)-1-methyl-7-nitro-1, 3-dihydro-2H-1, 4-benzodiazepin-2-one (ID-690)の薬理学的研究 ―特に運動系に対する作用―
- 6年制薬学教育を主軸とする薬系・医系・看護系大学による教育連携