原因不明の胸水貯留を繰り返し, 剖検にて尿毒症性胸膜炎と診断し得た維持透析患者の1例
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概要
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症例は78歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため2004年10月より,維持血液透析を施行していた.2006年10月頃から除水強化にて改善しない右片側性胸水の貯留を認め,精査目的に入院.胸水の性状は血性・滲出性であり,各種検索を行ったものの原因は明らかではなかった.結核性胸膜炎を疑い抗結核薬の投与を行ったが改善せず,2007年6月には左側にも胸水貯留を認めるようになった.CTガイド下胸膜生検,胸腔鏡下胸膜生検まで施行したが,悪性腫瘍や結核性胸膜炎の所見は認めなかった.2007年11月に呼吸不全のため死亡したが,病理解剖の結果,胸膜の線維化と胸膜炎を認めるのみであり,総合的に判断した結果,尿毒症性胸膜炎の疑いが強いと考えられた.尿毒症性胸膜炎は維持透析患者の胸水の原因として比較的多いと考えられるが,十分に認知されていない疾患である.結核や悪性腫瘍などの器質的疾患に伴う難治性胸水は維持透析患者でも比較的頻繁に認められるが,本症例は病理解剖にても胸水の原因となる器質的疾患が確認できず,尿毒症性胸膜炎と判断せざるを得ない症例であり,透析患者における胸水貯留の鑑別を考えるうえで示唆に富む症例と考えられる.
- 社団法人 日本透析医学会の論文
- 2009-12-28
著者
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柴田 真希
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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片桐 大輔
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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勝馬 愛
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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舛本 祥一
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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南 恵理
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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星野 太郎
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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多田 真奈美
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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井上 剛
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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中村 太一
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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日ノ下 文彦
国立国際医療センター戸山病院腎臓内科
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