免疫制御機構を利用したアレルゲン特異的 Immunotherapy
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概要
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欧米では,様々な花粉症や通年性アレルギー性鼻炎を対象とするアレルゲン免疫療法(allergen Immunotherapy ; AIT)が,根本的な治療法として実施されている.しかしながら本邦では,長期間の通院治療を要することや作用機構が解明されていないことなどから,十分に普及していないのが現状である.現在我々は,スギ花粉症のAITへの実用化を目指した新規治療ワクチンの研究を進めている.治療ワクチンの第一候補として,生体内でアレルゲン特異的に免疫制御機構を誘導することを目的に,アレルゲンタンパク質と免疫制御細胞を活性化する化合物を包含した免疫制御リポソームを考案した.モデル実験として,卵白アルブミン(OVA)と不変ナチュラル・キラーT(iNKT)細胞を活性化するCD1dリガンドを封入した免疫制御OVAリポソームをOVA感作したマウスに投与した結果,追加免疫で惹起される二次的なIgE抗体産生が著しく抑制されることを認めた.これらのマウスは,数ヶ月後のOVA追加免疫においてもIgE抗体の上昇が認められなかった.以上の結果から,免疫制御OVAリポソームは長期に渡り免疫寛容を誘導できることが示唆された.次に,免疫制御OVAリポソームを投与したマウスの脾臓細胞を解析した.その結果,樹状細胞やマクロファージ以外に,B細胞にも免疫制御OVAリポソームが取り込まれ,iNKT細胞との会合でIL-10を産生し,制御性T細胞を誘導することが示唆された.現在,スギ花粉症ワクチンとして,アナフィラキシーの危険性がないように設計された組換えCryj 1-Cryj 2融合蛋白質を封入した免疫制御リポソームを製造し,その薬効を確認している.本ワクチン投与によって,スギ花粉飛散前にアレルゲン特異的な免疫制御機能を高めておくことができれば,スギ花粉飛散期のIgE抗体産生が抑制され,さらに免疫寛容を誘導できれば,その後のアレルギー症状の軽減と長期的な治療効果が期待できる.
- 2008-10-31
著者
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石井 保之
独立行政法人理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センターワクチンデザイン研究チーム
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石井 保之
理化学研究所rcaiワクチンデザイン研究:株式会社レグイミューン
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石井 保之
千葉大学免疫発生学
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