GPIアンカー型タンパク質の生合成経路 : 抗真菌剤および抗ガン剤の潜在的作用標的部位
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概要
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酵母やカビなど真菌に特異的な細胞壁成分の生合成経路は抗真菌剤開発における有効な作用標的部位である.細胞壁の主要な構成成分の1つであるマンナン糖タンパク質は,細胞壁の最外層に局在し,C末端側には糖脂質グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)が付加した構造をしている.酵母からヒトまで保存されたGPIの生合成には24以上の遺伝子が関与している.GPIは小胞体で生合成され,完成したGPIはタンパク質に転移後,GPI部分の脂質リモデリングを経て細胞膜に輸送・局在化する.さらに酵母など真菌では,GPI型タンパク質の多くは細胞膜でGPIの脂質部分が除去されて,GPIの糖鎖部分で細胞壁のグルカンに共有結合する.我々は,GPI生合成過程のうち,1)抗真菌剤の候補化合物の作用標的部位として単離した機能未知なGWT1遺伝子,2)GPIのマンノース糖鎖部分へのエタノールアミンリン酸の付加に関与するGPI7遺伝子,3)GPIがタンパク質へ転移後の最初の反応であるイノシトール環の脱アシル化に関与するBST1遺伝子,そして,4)GPI型タンパク質におけるGPI部分の脂質リモデリングに関与するPER1およびCWH43遺伝子の生理機能を解析した.出芽酵母で得られた上記の研究成果は,新規な抗真菌剤の探索やその作用標的部位の解析,あるいは,新規なガンの診断法や治療法の開発への貢献などが期待される.
- 2008-10-30
著者
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