縄文人の活動様式 : 未成人四肢骨の骨幹断面形状からの考察
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概要
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古代人の子供期における活動様式を検討するため,縄文・弥生・中世・近現代未成人骨の四肢骨を用いて,その成長パターンを明らかにした。その結果,縄文人の上肢は,1–3歳にかけて他集団よりも骨幹径が大きく,その断面形状に扁平性が比較的強く表れたが,この傾向はその後小児期に消失していた。下肢については,縄文人の下肢を特徴づける扁平(柱状)性は,10–12歳から次第に形成されていくことが明らかになった。まず,縄文人の下肢を特徴付けている扁平(柱状)性が,他集団との比較において思春期前後から強まる点に関しては,従来提示されてきたような支柱・栄養不良混合説(森本,1981)を補強するものと考えられる。縄文人の場合,前後方向にかかる力はその主な生業である狩猟採集活動に因るものと想定されるため,縄文人の子供は遅くても思春期頃までには生業活動に参加し始めていたものと思われる。一方,1–3歳時の縄文人の上肢が他集団に比べて頑丈性が顕著であった点については,その成因は明確ではないが,やはり彼らの活動様式との関係が疑われる。
- 日本人類学会の論文
- 2007-12-01