中枢性トレランスと自己免疫疾患
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
中枢性トレランスは胸腺における幼若T細胞のレパトア選択によって形成され,自己の抗原に反応する免疫応答を防いでいる.幼若T細胞は,そのTCRの抗原特異性によって成熟(正の選択)か死(負の選択)という全く異なる運命を辿るが,それらの過程は別個の細胞内シグナル伝達経路によって制御されている.特に,TCR複合体に会合するZAP-70の機能異常,あるいは負の選択を制御するアポトーシス誘導因子Bimの欠損は,自己トレランスの破綻と自己免疫疾患をもたらす.さらに,レパトア選択の過程から分化するCD25+CD4+制御性T細胞は末梢における自己トレランスの維持に重要であり,その分化には転写因子Foxp3が必要である.一方,中枢性トレランスの確立には,幼若T細胞を取り巻く胸腺微小環境が必要である.胸腺髄質の形成に必要なNF-κB活性化経路,髄質上皮細胞での組織特異的抗原の発現を制御する因子AIRE,幼若T細胞の皮質から髄質への移動に関わるCCR7シグナル等が明らかにされており,これらの分子の機能異常はいずれも自己免疫疾患をもたらす.
- 日本臨床免疫学会の論文
- 2006-02-28
著者
-
高浜 洋介
徳島大学ゲノム機能研究センター道伝子実験施設・理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター免疫系発生研究チーム
-
新田 剛
徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝子実験施設
-
高濱 洋介
徳島大学疾患ゲノム研究センター
関連論文
- CD8[+]T細胞のレパートリー形成と胸腺プロテアソーム
- ヒトSeminomaのscid-nu^二重変異マウスでの継代移植の成功とその病理像
- 自己抗体誘導性B細胞刺激因子の同定とB細胞応答性のMHCに連鎖した遺伝子支配
- 胸腺におけるT細胞の正負選択 (特集 胸腺の発生とT細胞の分化--教科書に出ていない免疫構造の新図式)
- 胸腺内T細胞分化に伴う細胞移動のケモカイン制御 (あゆみ リンパ球ホーミングの分子機構--最近の展開)
- CCR7ケモカインによる成熟胸腺細胞の髄質移入制御
- 免疫系発生モデルとしてのゼブラフィッシュ&メダカ:胸腺を中心に (特集 ヒト疾患モデルとしてのゼブラフィッシュ&メダカ)
- 徳島大学ゲノム機能研究センター
- 中枢性トレランスと自己免疫疾患
- T系列細胞の胸腺内移動とケモカイン・接着分子 (特集1 T細胞の分化をめぐって)
- メダカを用いた胸腺器官発生機構の解析 (免疫系の形成)
- 細胞情報解析装置 共焦点レーザー顕微鏡による多重蛍光解析 (バイオ高性能機器・新技術利用マニュアル) -- (各種解析装置の原理と使用例)
- T細胞選択を制御する分子シグナル
- T細胞とB細胞への分化方向を決定する分子要因
- T細胞抗原受容体を介する幼若T細胞の運命分岐 (特集 免疫システムを支える抗原情報伝達の多様な分子機構--抗原の質はいかにして認識されるか?)
- 幼若Tリンパ球の生と死を決定づけるシグナル伝達 (特集 T細胞シグナル研究の最前線)
- MAPKによる胸腺細胞の選択制御 (免疫制御の分子生物学)
- Tリンパ球分化の分子機構
- 特別講演胸腺の発生生物学(第21回日本胸腺研究会)
- Tリンパの分化と選択における胸腺細胞移動の意義
- 胸腺と免疫系形成 (特集 神経筋接合部--基礎から臨床まで)
- 免疫の場 : リンパ器官の形成・連携・再構築
- 胸腺微小環境におけるTリンパ球の分化と選択