心不全におけるリアノジン受容体機能異常
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概要
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心不全は心筋の収縮,弛緩の障害を基盤とする症候群であり,その原因として心筋細胞内Ca2+調節の異常が重要である.なかでも,心筋筋小胞体(SR)は,Ca2+動員機構に重要なタンパク質(リアノジン受容体(RyR),Ca2+-ATPase,ホスホランバン,カルセクエストリンなど)を含んでおりCa2+動員機構の中心的役割をになう.即ちCa2+の放出はRyRを介して,またCa2+の取り込みはCa2+-ATPaseの働きにより行われる.従って,心筋細胞内Ca2+調節の異常にしめるSRの役割は大きく,SRの機能異常とその構成タンパク質の変化は収縮,拡張障害に直接影響する.SRからのCa2+放出をつかさどるリアノジン受容体(RyR:心筋型はRyR2,骨格筋型はRyR1)は,他の多くのイオンチャネルと異なり巨大な高分子タンパクとして存在し,チャネルポアを形成する膜貫通領域は全体の約1割を占めるに過ぎない.残りの約9割は細胞質側に突出した構造物として存在しており,チャネル開閉を調節していると考えられるが,その詳細な役割については不明であった.最近,心不全時に,リアノジン受容体から異常なCa2+漏出が生じており,このCa2+漏出はSR Ca2+貯蔵量の減少から心収縮・弛緩能の障害を惹起しうること,さらに,delayed after deporalization(DAD)を介して致死的不整脈の要因となることが示された.さらに,RyRとその調節タンパクであるFKBP12.6の相互作用やRyR内の特定領域の構造変化は生理的なチャネル開閉にとって極めて重要であるが,それらの機能的異常はCa2+漏出を生じ心不全や不整脈の発症ないし病態の悪化に深く関与することも明らかとなった.また,このような細胞内Ca2+制御異常を正常化することにより心不全の発現を抑制できる可能性が実験的に示されるようになり,SRのCa2+制御タンパクは新たな心不全治療ターゲットとしても期待されている.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-12-01
著者
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