モルヒネ依存における持続的神経内プロテインキナーゼCの活性化と細胞-細胞間相互作用
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概要
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非疼痛下におけるモルヒネの慢性投与によって,強度の精神および身体依存や耐性が形成されることが知られている.モルヒネの依存形成過程には古くよりドパミン神経系をはじめとするモノアミン神経系の関与が指摘されていた.しかしながら,モルヒネの投与によって生じる依存・耐性形成メカニズムはこうした神経系に関連する事象だけでは説明が不可能であり,著者らは詳細なモルヒネの依存・耐性形成メカニズムの解明を目指して多角的な検討を続けている.モルヒネの精神依存や鎮痛耐性の形成には,グルタミン酸神経系の情報伝達効率の変化もまた重要な役割を果たす.著者らの最近の研究により,モルヒネによるグルタミン酸神経系の変化には,protein kinase-C(PKC)やcyclin-dependent kinase 5(cdk5)といったキナーゼの活性化を介した細胞内情報伝達系のダイナミックな制御機構が関与していることが明らかになった.一方,グリア細胞が神経可塑的な変化に重要な役割を果たしていることが近年多数報告されている.著者らはグリア細胞の中でもその大部分を占めるアストロサイトに着目し,アストロサイトに対するモルヒネの作用を研究している.最近,著者らは,モルヒネによって誘発される依存形成時には中枢神経系におけるアストロサイトの活性化がおきており,このアストロサイトより放出される液性因子がモルヒネの依存・耐性形成を促進していることを明らかにした.さらに,モルヒネの依存・耐性形成時には,アストロサイト由来の液性因子に起因するJak/STAT系を介したアストロサイトの新生が誘発されている可能性が示唆された.これらの実験成果は,神経細胞,グリア細胞および神経幹細胞がPKCやcdk5などの因子を介して相互に情報伝達を行っており,モルヒネの依存・耐性形成時にはこれらの細胞-細胞間相互作用が極めて重要な役割を担っている可能性を強く示唆している.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2006-01-01
著者
-
成田 年
星薬科大学薬品毒性学教室
-
鈴木 勉
星薬科大学薬品毒性学教室
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宮竹 真由美
星薬科大学薬学部薬品毒性学教室
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鈴木 雅美
星薬科大学薬品毒性学教室
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鈴木 勉
岡山大学医学部麻酔・蘇生学教室
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成田 年
星薬科大学薬理学教室
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成田 年
星薬科大学 薬品毒性学教室
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鈴木 勉
星薬科大学 薬品毒性学教室
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宮竹 真由美
星薬科大学 薬品毒性学教室
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鈴木 雅美
星薬科大学 薬品毒性学教室
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