難治性神経疾患に対する治療法の開発と実用化へ向けて
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概要
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綜説中枢神経系は、外敵から身を守り,組織修復に重要な免疫系から隔離された特殊な環境にある.なぜ,二つの重要なシステムが分離されたのかは未だに不明であるが,進化の過程で,高等生物の中枢神経系の秩序を守るために,必然的に生じた結果なのかもしれない.しかし,ひとたび何らかの異常が発生したときには,この特殊な環境がマイナスに働いているのではないかという仮鋭を立て,免疫系を利用した疾患治療の研究を進めてきた.現在,3つのテーマを重点的に進めることにより,新しい治療技術,治療薬の実用化を日指している. 第一は,中枢神経再生を目指した免疫治療アプローチである.免疫制御に最も重要である樹状細胞を損傷部に移値する治療法を考案し,成熟哺乳類の脊髄において,本治療法により神経細胞が新生しうることを証明した.現在、臨床応用を目指して,サルモデルでの実験を進めている.第二は,単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた癌ワクチン療法である.腫煽内にHSVを投与すると,樹状細胞を活性化して,癌ワクチンとして働くことが明らかになった.脳腫揚をはじめとする様々なマウス腫瑠モデルにおいて本治療法の有効性を証明し,現在,臨床応用へ向けたウイルス作製の準備を進めている.第三は,疾患特異的な抗原分子を用いた免疫治療アプローチである.これまでに,脳腫鰯特異的な抗原遺伝子を同定し,抗原ベプチドを用いた免疫療法の臨床応用を検討している. 我々は,臨床医学へ応用される研究を推進させるために,パイオベンチャー企業(株式会社GBS研究所)を設立して,研究成果の実用化という明確な方向性のもと,目標の達成を目指している.本稿では,現在進めている3つのテーマの基盤的な研究内容を紹介し,さらに大学発ベンチャーとの産学速携研究体制について概説する.
- 慶應医学会の論文
- 2005-12-25
著者
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