単分子スペックル顕微鏡がみせるアクチン重合の細胞内分子キネティクス
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概要
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アクチン細胞骨格系は細胞表層の形態を制御し,遊走,細胞質分裂,細胞間のネットワーク構築などに重要な役割を果たす.細胞内のアクチンは数十秒単位で重合,脱重合を繰り返すが,その詳細をリアルタイムで捉えることは困難であった.筆者は,蛍光スペックル顕微鏡を改良し,標識体の濃度を下げることで,蛍光標識アクチンが生きた細胞内で一分子ごとに可視化できることを見出した.細胞骨格のように比較的ゆっくり,秒の単位で改編するものでは,この単分子スペックル法によって分子が構造に会合する部位,そこから解離する速度を高い分解能をもって可視化解析できる.これを用い,その伸展運動がアクチン重合で駆動されるラメリポディアにおける詳細なアクチン重合分布,線維の寿命分布を明らかにした.現在,その制御様式の解明を目指し,種々のアクチン結合分子への応用が進行中である.また,この単分子イメージングを応用し,我々はアクチン重合によって駆動される新規分子移動機構を発見した.このように,単分子イメージングは生きた細胞内で特定の分子のキネティクスを観察し,その生化学的性質を捉えることを可能とする.また,アクチン作用薬処理における作用特異的な反応を分子レベルで可視化することにも成功しており,細胞などの複雑系における薬剤と分子機能の連関を知るための手法として,将来応用が広がるかもしれない.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-02-01