古大津絵の色彩に関する研究 : 第2報 色彩構成と配色美の特徴
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概要
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大津絵は安価な、いわゆる泥絵の具で描かれている。使用されている絵の具の種類は少なく、その上混色や重色を行わず描かれているにも拘わらず、配色調和が得られ非常に美的で親しみやすい絵であると考えられる。そこで、各絵の色彩がどのように構成されているのか分析し、また、なぜ美しく感じられるのかその要因を究明したいと考え本研究を行った。その結果、次のような結論を得た。1.無彩色の面積比は絵全体の約20%を占めていた。世俗画の方が仏画よりその率は高かったが、これは、中〜低明度の無彩色の面積比が仏画より高いことが原因していた。さらに、無彩色の種類も世俗画に多かったが、それは、少量の白が数多くの絵に使用されているためであると考えられた。2.絵全体に配色調和が得られていた原因の1つに使用色が主にソフトな色調で、しかもウォームカラー間の配色であることが明らかになった。3.墨による縁取りはセパレーションとしての美的効果を発揮していた。4,丹絵としての特徴は仏画に多くみられた。また、丹の面積比は僅かであったが、その存在はアクセントカラーとしての効果を充分発揮していた。
- 日本色彩学会の論文
- 2002-09-01