進行直腸癌標準手術構築の基盤と課題 : オランダでの手術経験から
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概要
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欧米と我が国の進行直腸癌に対する治療戦略には基本的な相違がありこの30年間変更はない.補助療法に重点を置く欧米に対し我が国はリンパ節郭清に重点を置く.<BR>1989年よりライデン大学と共同研究を開始し直腸癌の成績を比較したところ,Dukes Cでがんセンターの成績が25%良好であった.この時期オランダは胃癌同様に直腸癌で大規模試験を行う計画であったがTMEかD3か採用術式は未知数であったためD3の実際をオランダ人直腸癌患者を通して具現したかった.こうした背景の中,がん克服新10ケ年戦略の一環として私がオランダに出向き日本式手術を供覧することとなった.1994年11月より4ヶ月間滞在し25の病院で60例の直腸癌の手術を行った.うちプロトコールに47例がeligibleであった.7割は男性で7割が下部直腸癌であった.胃癌D2群の手術死亡率が10%と高く郭清に対する否定的背景があった.始めの数例にはD3手術を行ったが体格差と高度動脈硬化などの血管周囲の病変のため側方郭清は侵襲過多(5時間,1000ml以上)に成ることが判明し自律神経の露出,温存,切除の仕方に重点を置き地元外科医に供覧した.pilot studyの結果はLancetなど3誌に発表し,機能と局所再発率において自律神経術の優位性を示すことができた.4ヶ月の間Heald氏も参加したシンポジュウムが3度開かれ議論の末,TMEvsTME+放射線の比較試験が1996年より開始されるコンサルタントとして以後このtrialに参加した.3年間で1500例が登録され,小さい国オランダの巨大な組織力を見せつけられた.このDutch trialの結果に欧米では多大な興味が持たれている.一方,我が国における補助療法や手術法に関する多施設共同研究の現状は十分なものとは言えない.側方郭清の有効性が言われて20年以上が経過したがD3手術の普及度はそれほど高くはない.側方郭清(D3)の生存率,QOL,手術侵襲に関する功罪即ち側方郭清の有効性の科学的証明がなされていないためである.側方郭清はどのような側方転移例に有効なのかD3の真のパワーを知らない.evidence-based surgery構築のためにはD3 vs TMEあるいはD3 vs TME+放射線に関する比較試験が是非必要で,大規模試験が完遂できる組織力が不可欠である.我々はquality control of surgeryが唯一可能な好位置にいる.
- 日本大腸肛門病学会の論文
- 2001-09-01
著者
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