最近の薬剤耐性結核問題とその対策
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概要
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薬剤耐性は耐性変異株が選択されるような環境があれば容易に発生する。結核対策においては, 不適切な薬剤方式, 患者の不規則な受診, 市中薬局での抗結核薬の販売, 薬剤供給の中断, あるいは無料の診断治療が受けられない, といった問題が薬剤耐性を作り出す。薬剤耐性結核の患者は地域で菌をばらまき, 初回耐性患者を作り, 彼らはまた次の世代の患者を作ることになる。世界の薬剤耐性結核サーベイランスに関するWHO報告によれば, 薬剤耐性はどの国にも広く行きわたっているが, 国によってかなりのばらつきが見られる。既治療患者の中で主要4剤 (INH, RFP, SM, EB) の少なくともいずれか1剤に耐性の割合はメジアンで25.2% (レンジ8.3%〜68.5%), また多剤耐性 (少なくともINHおよびRFPに耐性) の割合は8.7% (0〜48.2%) であった。未治療患者では (初回耐性) についても同様にばらつくが, 何らかの耐性がある者の頻度はメジアンが10.9% (レンジ1.7%〜40.6%), また多剤耐性は1.1% (0〜14.1%) であった。初回患者における多剤耐性の頻度が3%を超えるところも12力国 (地域) にみられた。これら多剤耐性結核患者の治療は困難で, 多くが不治のうちに他人を巻き込むような状態になる。このような菌による集団発生事件すら報告されている。このような問題を予防するために, 新たに発見した患者を確実に治癒し, 同時に早期に多剤耐性結核を発見・治療するため最大限の努力をすべきである。
- 日本結核病学会の論文
- 2002-11-15