共同生活が困難な学齢期自閉症児への家庭における療育指導
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概要
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1自閉症児に対し両親の協力を得て療育指導を行った.症例は,重度の知的障害,激しい多動性,攻撃的行動,破壊的行為,自傷行為,常同行動,社会的判断や弁別力の欠如,そして社会的対人関係障害のため,家族との共同生活に支障をきたしていた.知能はPiagetの感覚運動的知能の第IV段階であった.また要求表出的伝達行為は乏しく,陳述的伝達行為はまったくなかった.模倣行為や人に対する関心は低く,人の接近に対する異常な恐怖があった.状況の把握や場面の転換に対する予期行為が乏しいためパニックを起こしやすく,そのことが彼自身の発達を阻んでいた.指示的な訓練方法に対しては激しく拒絶するため,飲食物や感覚遊びのような症例の要求に直結するような教材を選び,予期行為や要求表現の方法を自然と学ばせるような指導方法を採った.結果,症例は行動と生活に見通しをもち,親子の絆が強まり,対人的コミュニケーション技能と意欲が高まった.
- 日本コミュニケーション障害学会の論文
- 1996-09-30