頭頸部扁平上皮癌における基底膜蛋白ラミニンの意義と癌治療への展開
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概要
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正常扁平上皮の分化を維持する構構の一つとして細胞-細胞間の接着や細胞-細胞外マトリックスの接着を介する制御があるが,頭頸部癌の大多数を占める扁平上皮癌はその制御機構が破綻したものといえる.舌扁平上皮癌のうち,癌細胞同士が接着し胞巣を形成しながら増殖している形態は比較的分化傾向を示すものであるが,細胞同士が分散し浸潤性の増殖を示す形態はより悪性化したものと考えられる.さらに最も悪性度が高い遠隔転移の形成にあたっては,癌細胞が単独または少数でも脈管内で生存できるという形質-anchorage independent growth-を獲得する必要がある.舌扁平上皮癌を用いた免疫組織学的検討から,癌細胞が接着した胞巣状増殖の場合は胞巣の辺縁細胞のみに細胞外マトリックスの一つであるラミニンの発現がみられるが,細胞分散性の強い浸潤能を示す場合は癌細胞一つ一つが自らラミニンを発現しており,その臨床的予後がより不良であることが分かった.加えて,ラミニンには悪性細胞の接着,遊走,遠隔転移を促進する活性部位が存在することが合成ペプチドを用いた基礎的実験より示されている.以上より,頭頸部扁平上皮癌においてラミニンは癌の増殖,浸潤,転移に促進的に作用していると考えられ,ペプチドを用いてラミニン活性を阻害することにより,癌治療へと展開できる可能性があると思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
- 2002-06-20
著者
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