速効短時間型血糖降下薬ナテグリニド(ファスティック^<【○!R】>,スターシス^<【○!R】>)の薬効薬理
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概要
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膵β細胞におけるインスリン分泌不全は,インスリン抵抗性と並んで2型糖尿病の成因となる主要な障害である.特に食事摂取に対応した急峻なインスリン分泌反応−初期インスリン分泌−の欠失は病態発症の早期から顕著であり,結果として食後高血糖を呈する.糖尿病患者に強化インスリン療法を施行した近年の大規模臨床試験は,糖尿病性合併症の発症予防・進展阻止のためには,空腹時高血糖のみならず食後高血糖の是正も含めた厳格な血糖コントロールが重要であることを明らかにした.しかし,既存のインスリン分泌促進薬(スルフォニル尿素(SU)剤)は,主として空腹時高血糖の低下に寄与するものであり,食後血糖の制御は充分ではない.この食後高血糖を是正する新たなインスリン分泌促進薬としてナテグリニド(ファスティック®,スターシス®)が登場した.本剤はSU骨格を有さないにもかかわらず,SU剤と同様に膵β細胞膜上のSU受容体に結合し,作用を発現する.in vitro作用機序の類似性とは対照的に,イヌにおける血糖降下のパターンは,SU剤に比して速効かつ短時間であった.さらにラットにおいて,ヒトの摂食習慣を模倣した6時間間隔2回の糖負荷による血糖上昇をいずれも抑制し得た(SU剤では抑制不可能).臨床試験においては,ナテグリニド30,60,90,120mgの1日3回,12週間投与によって2型糖尿病患者の食後血糖推移が用量依存的に改善し,初期インスリン分泌反応も回復した.加えて,空腹時血糖値,HbAlc値の低下も認められた.ナテグリニドはその作用の速効性・短時間性ゆえに,2型糖尿病患者で減弱した初期インスリン分泌を補完し,毎食後の血糖上昇を抑制する.生理的インスリン分泌の再現によって良好な血糖コントロールを実現する新たな手段として,臨床での活躍が期待される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2000-09-01