シリサイド半導体の電子構造と応用への展望
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概要
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本稿では, 格子ひずみが電子バンドをいかに変調するかを中心に説明し, Siとのヘテロエピタキシャル成長を利用し, β-FeSi<SUB>2</SUB>格子をひずませることによって, <BR>(1) バンドギャップの変調 (間接遷移→直接遷移) <BR>(2) 振動子強度の増大 (<I>f</I>=0〜10<SUP>-5</SUP>→0.69) <BR>(3) 有効質量の変調 (キャリア移動度→増加) が原理的に可能であることを示した.<BR>これは, 「格子ひずみによるバンドエンジニアリング」がβ-FeSi<SUB>2</SUB>を用いた光エレクトロニクスの重要な技術であることを示している.現在までに作製された発光・受光素子は, いずれも低効率であるが, これらの課題についても, 格子ひずみの能動的な制御を試みることで解決できるものが多いと考えられる.また, 目的とする特性の設計やその向上をめざした格子ひずみの最適化技術は, ひずんだシリサイド半導体のバンド計算の結果を積極的に利用することによって実現するであろう.これが, β-FeSi<SUB>2</SUB>のみならず, 結晶構造が類似で, バンドギャップへの遷移金属の3d状態の寄与が大きい遷移金属シリサイド半導体の電子構造に共通の背景であるといえる.バンド計算と実験のより進んだ密接な共同作業が, シリサイド半導体の物理と応用の成否に重要であると思われる.<BR>更に, 強磁性シリサイドFe<SUB>3</SUB>Siとβ-FeSi<SUB>2</SUB>などシリサイド半導体とのヘテロエピタキシャルは, 未だ手付かずの研究領域であるが, d電子系のシリサイド半導体・スピントロニクスへの展開として興味深く, 研究が待たれる.また, ごく最近, 三元化合物 (FeOs) Si<SUB>2</SUB>は, 著しい振動子強度の増大が予測されており, 発光材料として, シリサイド三元化合物半導体には, この外にも有望なものが数多く存在するものと考えられる.
- 日本真空協会の論文
- 2002-01-20
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