プリオン病
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概要
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ヒトの Creutzfeldt-Jakob disease (CJD)やヒツジのスクレイピーなど特微的な脳組織の海綿状変性を呈する疾患群は,かつて遅発性ウイルス感染症に分類され長い間病原因子は不明であったが,核酸を持たない病原体, "プリオン"の概念の提唱とその後のプリオン蛋白およびプリオン遺伝子の発見以来,分子レベル,遺伝子レベルでの解析が進み,異常型プリオン蛋白が脳内に蓄積し,神経変性を起こす疾患群を総じてプリオン病と呼ぶようになってきた.正常型プリオン蛋白は通常の脳組織に存在すること,そしてプリオンの感染(あるいはプリオン遺伝子異常に伴うアミノ酸置換)によって正常型から異常型への構造変換が起こり,異常型プリオン蛋白が脳内に蓄積するという,既知の病原体あるいは遺伝子病とは全くことなる新たな病態像が明らかになりつつある.プリオンにはいわゆる"種の壁"の存在が認められ動物からヒトへの感染はこれまで確認されたことはなかったが,十数年来の英国におけるウシ海綿状脳症の大流行と近年同国の若年者に発生した新型CJDの報告は,ウシからヒトへと伝播した可能性が否定できず,世界を巻き込んでのパニックを引き起こした.科学的結論を得るには時期尚早であるが,いまだ治療法のない致死性疾患であり,食肉および医薬品の使用に関しては十分な安全対策が講じられるべきである.
- 1997-07-10
著者
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